2005-10-22
ルチノちゃん家出騒動記 その(6)怒涛の捜査1課・解決篇
ポスト @ 16:38:21 | 01.全て,08.家出騒動記
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捜索3日目。その日も真夏のような暑さでした。ジリジリと焼け付く太陽の下、私は職場へ、Aは捜索現場へと向かいました。いつも通りのAからの「これからはじめます」コールを留守録で確認し、私はふっと今までのことを反芻しました。
思えばルチノちゃんは元気で明るく甘えん坊の子でした。あらゆるものに興味を示し、「ルチノちゃん!」の呼びかけには大きな声で「ピピッ!」と応え、私の後追いをしてはトイレにまで一緒に来るようなべったりさんでした。いなくなってしまった今では、部屋の中には全くといっていいほど音がなくなってしまいました。よくさえずるピーちゃんでさえ全く鳴こうとしません。かごの入り口をいつものように開けておいても出てこようともせず、ひっそりと止まり木に止まったまま動かないのです。 <ピーちゃんもさみしいんだな・・・このままではピーちゃんもダメになってしまう・・・> 悲しみがこみ上げてきました。私は頭の中の思考を断ち切り、仕事に没頭するよう努力しました。
午後4時半、家に戻り疲れた体をソフアーに投げ出しました。疲れているのに・・・眠いのに・・・どうしてか眠ることができません。眠ることが怖い・・・そんな気さえしてしまうのでした。午後6時を回ったころ電話が鳴りました。 <ああ、Aだな・・・終わったんだな・・・何か情報あったんだろうか・・・>
「暑いところお疲れ様でした」と言って受話器を取ると 「見つかりました!!」という怒鳴るようなAの声! <はっ!また?まさか・・・> 咄嗟にそう思いました。続けてAは言いました。 「子供が見た、と言っている方角にあるマンションの方が保護してくれています。私も見てきましたが、今度は間違いないと思います!すぐに確認に来てください」 「本当に!?はい、すぐに行きます!」 声はうわずっていました。いつもなら近くまで車で行くところでしたが、どうしたことかそうした知恵も働かず、着の身着のままサンダルをつっかけて小走りに教えられたマンションに向かいました。
そこは最近できたばかりのオートロック式のマンションでした。保護宅は5階のBさんという方でした。緊張して玄関前まで進みました。呼び鈴に20代後半とおぼしき男性が小さな鳥かごを持って現れました。 <!!!ルチノちゃん!ルチノちゃんに間違いない!!> 奇妙な興奮に襲われ、心も体もカーッと熱くなりました。必死になって冷静に振舞いました。
ルチノちゃんは家出した木曜日の翌日・・・金曜日の夕方にはこのBさんに保護されていたのです。Bさんのマンションのベランダ(5階です。ずいぶん上まで飛ぶんですね。)で大きな声で鳴いていたそうです。おなかも空いていたんだろうし、心細くもあったんでしょう・・・。Bさんの飼い犬が室内からジーと見ていたので気づいたそうです。保護されたときの様子を聞きましたが、えさも良く食べ、なんとBさんの手の中で眠ったりしていたそうなんです。 <そう・・・ルチノちゃんは男の人の大きな温かい手が好きなんだよね・・> ルチノちゃんらしいエピソードに口元がほころびました。
Bさんは本当に親切な方でした。かごやエサを買い求めてくださり、けがをしているようだからと言って、「鳥」と表示のある動物病院を探して獣医さんに診せてくれまでしていたのです!けが・・・とBさんが思ったのは持病の毛引き症(首の後ろの毛を自分で抜いてしまう)なのでした。獣医さんには「心配ない」と言われたそうです。そして駅に貼ってあるポスターを見て連絡をくれたのでした。感激で胸がいっぱいになりました。人の優しさがこのときほど心にしみたことはありません。
あらためてお礼に伺うことにしてBさん宅を後にしました。そしてAとはマンション前で別れました。 「Aさん、本当に本当にありがとう!」 「良かったですね!これからは逃がさないように気をつけて飼ってくださいね!」 「ええ、気をつけます。懲りましたからね!でももし居なくなったらまたAさんに頼むからね!!」 ニヤリとAが口元に笑いを浮かべました。そうして手を振って駅へと去っていきました。明日もう一度来てポスターを撤去してくれるとのことでした。
私はルチノちゃんのかごを手に提げ小走りに我が家に向かいました。仕事中かな・・・とは思いましたが帰る道々夫にも電話を入れてみました。 「ルチノちゃん、帰ったよ!」 「えっ!ホント?そうなの?」 抑えた声でしたが喜びが滲み出ていました。夫は夫で眠れぬ夜を過ごしていたのです。家族みながそうなのでしょう・・・。 <ああ、本当にルチノちゃんが帰ってよかった!本当によかった!!> ふつふつと喜びが湧き上がってきました。
「さあ、ルチノちゃん、帰ろう!おうちに帰ろう!!」 私はかごの中の小鳥にそっとささやき、暮れなずむ空の下、家路へと急いだのでした。
・・・そして 今・・・
ルチノちゃんは帰ってしばらくはここでの習慣を忘れかけているような気配がありました。かごから出すと、いつもよく止まっていた鏡の前の綱にすぐに飛んでいきましたし、自分の元のかごの上にもサッと飛んでいきましたから、全く忘れているわけではないようです。でも「ここではこんなことをしていた」「こういう時はこんな行動を必ずした」というような”お決まり”のすり込まれた習慣はしばらくは見られませんでした。
無理もありません。出たこともない外の世界・・・夜の闇・・・知らない人の家(おそらく犬の居る家では放鳥は無かったことでしょう)・・・全く初めてばかりの経験、ショッキングな経験をしたのです。きっと徐々に思い出していくだろうと思い、温かく見守っていきました。
完全にもとの習慣が戻ってきたのは2週間くらいたったころでしょうか・・・今では前以上におちゃめでやんちゃなルチノちゃんです。壁紙をはがしたり、棚の上のものを落としたりして喜んでいるルチノちゃんを私はあわてて追い掛け回している・・・そんな日々を過ごしています。
HAPPY LIFE! しあわせな日々が私たち家族に戻ってきました