2008-02-06
日本人のしきたり
ポスト @ 17:45:52 | 01.全て,05.読書の小部屋
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過日ご紹介した「女性の品格」は大躍進を続け、年が明けても週間売り上げ上位にランクインしているようです。この本のヒットは今まで中高年男性がメインだった新書市場に、若い世代や女性をたくさん呼び込む結果となったとか。
かく言う私も最近新書コーナーをぶらつくことが多くなったようです。啓蒙書然としてとっつきづらいイメージのあった新書も、読んでみればとても分かりやすく読みやすいものが多いようです。こうして自分の中の垣根が低くなったところで次にトライしたのが、「日本人のしきたり」(朝倉晴武著)です。
しきたり―。若い頃には全く興味のなかったものが、最近俄かに気になりはじめました(笑)。私たちの生活のここかしこにしっかりと根付き、ほとんど無意識状態にその影響を受けている諸々のしきたり・・。人生半ばまできて、こうしたものの意味をここらできちんと知っておきたい・・・そんな気持ちがこの本に手を伸ばさせたのでしょうか。まあ、中年の証とも言える現象なのでしょうね。
さて、この書では細かい項に分けて日本人のしきたりについて書かれています。正月行事、年中行事、結婚、懐妊・出産、祝い事、贈答、手紙、葬式、縁起・・・。それぞれのしきたり、伝統にどのような意味があるのか、そこに込められた古の人の知恵や心が端的に記されています。
正月に玄関前に立てる「門松」は、年神様が降りてくるときの目印であるとか、もともとは女の子のお祭りであった端午の節句が、平安時代の頃に男の子のお祭りに変わったとか、土用の丑の日にウナギを食べる習慣は、江戸時代に蘭学者であった平賀源内がウナギ屋の宣伝策の一環として広めたとか、トリビアではありませんが「へぇ〜〜」と思うことも多かったです。
各項目は短く簡潔に書かれていますから大変読みやすいです。そして全編を通じていくつかのことが読み取れます。まず、日本人のしきたりには独自の自然観や感性が息づいているということです。農耕が主たる生活手段だった日本人は季節の移り変わり、自然現象などから色々なことを予測したり読み取ったりしてきました。その知恵が長い時を経てしきたりとして定着したのでしょうね。
また、しきたりの多くが中国からきたものがベースになっているということにも大いに驚かされます。日本はこんなにも中国の影響を受けたのかと再認識させられました(今も某事件で大騒ぎですが、お手本としてきた国との関係が良好でないということは悲しいことですね)。
そして、日本人の宗教観もしきたりにまた大きく影響しているようです。元々日本は「八百万の神」といって、山川草木、あらゆるものに神を見出してきた「神」を信仰する国です。この日本古来の神道に大陸から伝わった仏教が融合して現在のようなスタイルができたわけですが、考えてみればこれは大変稀有な現象ではないでしょうか。この神も仏も一緒に仲良く尊ぶというスタイルには、日本人の”八百万”の精神が顕著に表れているようにも思います。このように特定の神を持たない日本人ではありますが、しかし宗教的な行動は意外にも多く、それがしきたりの中にも根付いているのがこの本を読むとよく理解できます。
こうした日本人の宗教スタイルは一神教に比べると「軽い」と言えなくもないのですが、身近にあるあらゆるものに神を見出す気質は、ささやかなもの、小さなものにも幸福を見出す精神にも通じ、私はこれをとても素直で素朴、愛らしい美点であると感じるのです。
唯一神に帰依する一神教がともすれば偏向的になり、信仰心が高じて宗教戦争をも引き起こしていることを考えると、この日本人の「あっちも好き、こっちも好き」精神もあながち悪いものではないな・・そんなことをもこの本から感じたのでした。何だかんだ言っても、やはり日本は平和、愛すべき国ですよね!